ハミ出し商社マンの徒然草

思ったことをツブやきます

現役商社マンが語る「商社の減損は必要悪」もっと大切な3つの事

今日は総合商社の減損についての考え方と、その株価や将来性について考えてみます。

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コロナウィルスに関連して総合商社が減損に関する発表をしています。

[https://twitter.com/MitsuiYataro/status/1250216023027929089:embed#伊藤忠、再燃する中国リスク 利益5000億円の行方:日本経済新聞 https://t.co/AkSE9hhj77もう一つ商社の減損の話。ちなみに個人的な感覚としてはCITICはうまくいかないんじゃないかと思ってます。(根拠はありません、経験則です。)

 

この減損ですが、あまりなじみのない方に不動産を例に簡単に説明します。
もしあなたがマンションを買って(仮に4000万円だとします)その後に、市況が悪くなって、売りに出そうとした時に3000万円になっていたとします。
個人であれば、住むなり、売るなりすれば良いだけの話ですが、これが上場企業となると、
株主に「すいません、3000万円になりました」と報告しなければなりません。
株主の資産ですからね。これが減損です。
(不動産と事業や会社
のちがいはあっても原理は一緒です。)
今回各社が理由としているのは「以前買った資源関係の会社の価値が、資源の値段が暴落していることによって価値が下がったので、ご報告します」と言うことです。
資産を持っている各商社は「減損」と言うと聞こえが悪いので、できるだお化粧して、減損を隠そうとします。それでも表に出てきているものは「どうにも隠せないもの」と考えて良いでしょう。

 

それでもヤタローは減損は必要悪(そんなに悪いものではない)と考えています。
理由は以下の通りです。

 

①減損の判断はテキトー
市場で値段がつく不動産や、上場株式と違って、市場に出ていない会社や事業の価値に値段をつける事は簡単ではなく、いわゆる「減損テスト」と言うプロセスを実施します。
ところが、このテスト、ヤタロー個人の経験から言うとプロセスと結果が極めて主観的です。これに一喜一憂することに意味はないでしょう。

 

キャッシュアウトがない
減損はキャッシュアウトをしませんので会社の価値を直接には壊しません。
既に壊れていたものが表面に出てきただけの話です。
億円単位で損が出るので仰々しいですが、あくまでも「会計上の利益は意見、キャッシュは事実」ということです。

 

③チャレンジの結果
貿易から投資へとビジネスを変容させている商社は新しいビジネスに投資をすることが本業です。とはいえ投資で100%勝つことは不可能なので、継続的に投資をしていれば減損は必ず起こります。むしろ起こらないということは、チャレンジしてないか、隠しているかもどちらかです。

減損ろりもむしろ、商社の将来性において考えておくべきポイントは以下です。

 

❶規模のある投資をしているか?
図体が大きくなって動きが鈍くなっている総合商社の活躍できる場所はどんどん狭くなってきていますが、それでも100億を超えるような投資案件には投資規模が参入障壁となり、総合商社に有利に働きます。
一方で大きすぎる案件に特化している商社はリスク分散できず要注意です。
(選択と集中、は戯言です。)
投資の巧拙での差別化も、ほぼないと考えます。

 

❷長いスパンで世の中に必要か?
同じく図体が大きいので、簡単に舵を切ることができませんが、それでも5年10年の大きなトレンドに誤ることなく投資できていれば、それなりのリターンを確保することができると思います。(逆に図体がでかいので、少しくらいヤバくても慣性が働いて舵切れません。周回遅れの投資が当たることもシバシバ。)従い世の中や業界の大きなトレンドをねらっている商社なのか、が二つ目のポイントです。その意味ではESG投資などに向いてます。

❸逆風で投資を継続しているか?
最後に、逆風にひるむことなく毎年同じような額を継続して投資することにより、割安の資産を保有する勇気のある商社に将来性を感じます。短期で見れば多少のブレはあっても、経済規模が時間を経て拡大していると言う事は歴史が証明しています。
この世界的な経済成長と時間を味方に付けることができれば、資産規模の大きい金持ちゲームとなり、商社の優位性が発揮できる道はあるのではないかと思います。

❶、❷、❸の基準に合う商社株を探してみてください。

最後にポンチ絵で纏めておきます。 

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商社マンが実践するインフォデミック対策に大切な3つのこと

に大切な3つのこと今日はコロナウィルスに「インフォデミック」について考えてみたいと思います。
そもそもこのインフォデミックが、何を正確に意味するのか ググってみました、日本語での定義は少ないようで、英語の"wikitionnary“の定義を和訳しておきます。
”Information(情報 + epidemic(疫病)=ある問題に対して過剰な情報が溢れて解決をより難しくすること”

 

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今回のコロナ騒ぎで印象的だったのはトイレットペーパーの買い占めが、偽りのTwitterではなく、それを直そうとした話そうとしたTwitterがさらに間違った憶測として拡散したと言うことです。

 

情報とは、このように脆弱なものですが、今回のコロナによる地球全体の損害を最小化するために私たち一人一人がやるべきことはソーシャルディスタンスや手洗いとともに、情報の受け手としての能力を向上することではないか、と考えます。
そこでヤタローが考える3つの方法を提案したいと思います。

①できるだけ情報ソースに直接あたる
情報のソースから遠ければ遠いほど不要なノイズが入ります。
幼稚園時代に「伝言ゲーム」をやったことがある方がいらっしいますかね?
これは幼稚園児を縦に並べて1番前の子に「ライオンはみんなでシマウマを狩る」と伝え順番に後ろの子に伝えてもらって、最後の子に「なんて聞いた?」と尋ねると、
伝聞情報は驚く程、不正確に伝わります。例えば冒頭の例では「シマウマは白い虎」とかそんな感じに伝わります。
驚くことに、これは大人の世界でも大差ありません。

また、商社駐在員として、東京の本社から御依頼を受けるのは「足で稼いだ情報を持って来い」ということですが、これも間接情報を不要に集めても意味ありません。
伝言情報を集めるなら、普段から適切な情報蒐集先と仲良くなって、文脈やボディーランゲージから、真意を汲み取り「ノイズを超えた付加価値」があって初めて意味があります。

 

②実名を出してリスクをとっている人に「情報のセレクトショップ」になってもらう
インフォデミックはSNS社会の副作用だとヤタローは考えますが、これを最小化するには「実名を出して情報発信している人」に選んでもらうことが良いと思います。
「実名を出す」ということは「リスクを取っている」ということで責任の所在が明らかゆえ情報の精度が格段に上がります。
この点においては大手の新聞社やテレビを凌駕します。
というのもヤタローの経験では、日本では信頼されている日経新聞でさえ、ヤタローの専門分野の記事を見ると間違った記載の頻度が想像を超えるほど高いのです。
これを考慮すると従来型のメディアの権力が徐々に削られ、いずれ強力な個人の集合体に置き換えられていくこと、不可避だと思います。)

セレクトショップ」はファッションを例にとるとわかりやすいでしょう。エストネーションとかビームスとか、センスの良さそうなバイヤーに服、クツ、家具、などを纏めて買い揃えておいてもらうイメージです。

 

③普段から知識をつけて、発信する
最後に、どれだけ信頼のおける情報を集めていても、受け手側の知識が十分でなければインフォデミックは起こります。従い、様々な方法で知識を蓄える一方で、できれば自分自身の考えを整理するために発信しましょう。(誰かにフィードバックもらえれば完璧です。)
音楽、芸術、学問も「歴史の洗礼」を受けて初めてホンモノになるとか。
(それ考えるとモーツアルトとか、すごいんでしょうね。多分。)

これらを始めようとしても時間やコストの観点でハードルが高いでしょうけれど、ヤタローが実践しているもののなかで無料のものをご紹介しておきます。

+メルマガ
大前研一さん
小宮一慶さん

+Podcast
伊藤洋一さん

+Twitter
橘玲さん
堀江貴文さん

+ブログ
ちきりんさん

なお国際派を自称する商社マンのヤタローですが、試行錯誤の結果、英語メディアでの情報収集は効率が悪いのですべてに終わりにしています。日本経済新聞フィナンシャル・タイムズの情報を使って、意味のある記事を予約してるくれることを願っています。

 

最後に今回の要点を図解しておきます。

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商社マンが語る各国のコロナウィルス対応(目的や手段が文化よって様々)


コロナウィルスの対策における最終目的と世界各国の対応違いについて記載し、自分が各国のトップだった場合にどのような対策を取るかシミュレーションしてみようと思います。

 

様々な国が政策を打ち出していますが国家と言う集団をリードする以上、何が最終ゴールなのか、ということをクリアにする必要があると思います。

コロナウィルスが収束するためのシナリオを考えると以下の3つに集約されるのではないかと考えます。

①ウィルスに対するワクチンができる

②ウィルスに対する対抗薬(インフルエンザに対するタミフルのようなもの)ができる

③集団免疫ができて、風邪のようになる

 

実態としては上記のどれかの「合わせ技」になることが現実的です。

 

これを念頭に各国の政治家が回避すべき定量的な目標は以下の3つだと考えます。

❶感染者の数を減らす

❷死亡者の数を減らす

❸自粛による経済的な破産を減らす

 

❷は❶の結果でもあり、強い相関があり、まずは❶を減らすことに主眼が置かれがちです。
また❸は短期的には顕在化しませんが、❶を達成しようとして「ロックダウウン(都市閉鎖)」すると副作用として時間を経てあらわれてきます。

ポンチ絵にすると以下のようになります。

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上記で明らかなように定量的な帰結は「死亡者数」で表わされることから、政策の成否は、この数値で評価することが最善だと考えます。

 

この課題の興味深いところは、様々な打ち手の中に多くのトレードオフが含まれており、これが各国の政治、経済、文化と絡まりあっているところです。個別に見ていきましょう。

 

まずは中国を考えると、①と②を主眼に置いて封鎖などのアクションを取り押さえ込みが成功したように見えますが、実態としては幸運にも③にことが至っているだけではないか、と見ています。(中国人の知り合いに確認しても事実隠蔽しているようにも見受けられず、アップルも中国で営業していることから、抑えこめているものと考えます。)しかし、このような抑え込みができるのは「共産党一党独裁」によるものであり、マネできる国は希少でしょう。(シンガポールとかドバイくらい?)

 

ドイツですが、驚くべき医療体制の充実で「しっかり検査して、感染者は治療する」という極めてまっとうな手法で死亡者数を抑え込んでいます。勤勉な国民性に起因する医療体制の強さ、強靭な国家財政に支えられた国家補助で、この危機を一番上手く乗り切った国家だと思います。メルケル首相のリーダーシップも危機に瀕して復活、国力の強さを感じます。
これを真似できる国は北欧のノルウェーとかスウェーデンくらいでしょうか?

 

イギリスは③の「集団免疫の確立」で対応しようとしましたが、「ロックダウン」への方向転換を余儀なくされました。これは先進的な免疫学の集積から、ワクチンや対抗薬よりも集団免疫の獲得が早いと判断したのでしょう。おそらく「ロックダウンへの方向変換」は政治的なポーズであり、実態として集団免疫への方向は変わっていないものと見ています。したがい一時的な混乱で経済的な谷は深いと思いますが、復活も早いとみています。(これに似た政策をとっているのはオランダですかね。)

 

アメリカは正直、どこに向かっているのか、良く見えません。自国民の安全よりも選挙対策に優先順位のあるリーダーであることは想像できるのですが、各地域ごとの格差が大きすぎて一貫した政策が取れないように見えます。失業を守るセーフティーネット(北欧は国、南欧は家族、日本は企業)もなく、分断が加速、コロナ後の傷跡が一番深くなる国だと思います。(これに似た国はありません。さすが、世界の超大国。)

 

オーストラリアについては「鎖国政策」であり、ワクチン、対抗薬、集団免疫のいずれにもよらず、中国がSARSを抑え込んだ形を模倣しているのでしょう。西海岸のパースは地理的に孤立して感染が遅れた一方で、国家政策は東海岸の大都市(シドニーメルボルン)で決められたという時差を活用して、「鎖国政策」が功を奏するとみています。ちなみに、これにに似た国もありません。(南極大陸くらいか?もしくは国土の広いロシア?)

 

最後に我が日本ですが、オリンピックに配慮して当初は「放置プレイ」でした。これが「駆け込み検査が引き起こすクラスター感染」を結果として引き起こさなかったのではないかと考えます。(検査の是非については堀江貴文さんと楽天の三木谷さんが、正反対の立場をとり興味深かったです。)結果として、一時的には感染爆発はしませんでした。ヤタロウとしては「既に集団免疫ができている」という仮説を支持します。(なお医学的根拠ありません。)その後、周回遅れで「ロックダウン」議論が巻き起こり、海外在住のヤタロウ視点では不可解に映ります。

 

最後に、昨日、コロナの抗体検査の記事を読みました。


ワクチン、対抗薬が早期にできないという前提では、「集団免疫」+「抗体のある人による経済活動」が日本にとっては最善のシナリオであるような気がします。したがい、ヤタロウが日本の為政者であれば、抗体検査の拡充、医療体制の充実、分別のある自粛(何でもかんでも中止ではなく)で集団免疫の獲得がメインシナリオです。(政治家の方は、そうは言えないのでしょうけれど。)

 

 

 

 

はじめに

就職氷河期」に総合商社に就職。
お決まりの貿易実務を経験して東南アジアに駐在、事業会社経営の機会を得る。
その後に企業を志すもあえなく沈没。
総合商社に舞い戻る。
再起を期して中東駐在も経験、現在はオセアニアでの駐在生活。
訪問した国は45カ国。
日本と他の国比較が趣味。